$n!$ を積分であらわす(漸化式版)

$n$ は自然数、$a$ は実数であるとして、定積分 $\int_0^\infty x^ne^{-ax}\,dx$ を計算してみよう。積分される関数が指数関数を含んでいるので、おそらく部分積分でいけるのではないか、と予測してやってみると \begin{align*} \int_0^\infty x^ne^{-ax}\,dx &= \int_0^\infty x^n \cdot \left(-\frac{1}{a}e^{-ax}\right)^\prime\,dx \\ &= \left[ x^n \cdot \left(-\frac{1}{a}e^{-ax}\right) \right]_0^\infty - \int_0^\infty nx^{n-1} \cdot \left(-\frac{1}{a}e^{-ax}\right) \,dx \\ &= \frac{n}{a}\int_0^\infty x^{n-1}e^{-ax}\,dx \end{align*} となる。結果をみると、積分がもとの関数によく似ているので、ふたたび部分積分を適用すると \begin{align*} \int_0^\infty x^{n-1}e^{-ax}\,dx &= \int_0^\infty x^{n-1} \cdot \left(-\frac{1}{a}e^{-ax}\right)^\prime\,dx \\ &= \left[ x^{n-1} \cdot \left(-\frac{1}{a}e^{-ax}\right) \right]_0^\infty - \int_0^\infty (n-1)x^{n-2} \cdot \left(-\frac{1}{a}e^{-ax}\right) \,dx \\ &= \frac{n-1}{a}\int_0^\infty x^{n-2}e^{-ax}\,dx \;. \end{align*} 同様に繰り返すと \begin{align*} \int_0^\infty x^{n-2}e^{-ax}\,dx &= \int_0^\infty x^{n-2} \cdot \left(-\frac{1}{a}e^{-ax}\right)^\prime\,dx \\ &= \left[ x^{n-2} \cdot \left(-\frac{1}{a}e^{-ax}\right) \right]_0^\infty - \int_0^\infty (n-2)x^{n-3} \cdot \left(-\frac{1}{a}e^{-ax}\right) \,dx \\ &= \frac{n-2}{a}\int_0^\infty x^{n-3}e^{-ax}\,dx \end{align*} という計算ができ、漸化式の「芽」が見えてくる。実際 $J(n) := \int_0^\infty x^ne^{-ax}\,dx$ とあらわすことにすると \begin{align*} & J(n) = \frac{n}{a} \cdot J(n-1) \;, \\ & J(n-1) = \frac{n-1}{a} \cdot J(n-2) \;, \\ & J(n-2) = \frac{n-2}{a} \cdot J(n-3) \end{align*} となる。これから帰納的な関係として \begin{align*} J(n) = \frac{n}{a} \cdot J(n-1) = n \cdot (n-1) \frac{1}{a^2} \cdot J(n-2) = \cdots = \frac{n!}{a^n} \cdot J(0) \end{align*} となっていることが見てとれる。あとは $J(0)$ が求まれば良くて、 \begin{align*} J(0) = \int_0^\infty e^{-ax}\,dx = \left[ -\frac{1}{a}e^{-ax} \right]_0^\infty = \frac{1}{a} \end{align*} であるから \begin{align*} J(n) = \int_0^\infty x^ne^{-ax}\,dx = \frac{n!}{a^{n+1}} \end{align*} となり、$a=1$ の場合には \begin{align*} n! = \int_0^\infty x^ne^{-x}\,dx \end{align*} という階乗の積分表現が得られる。

さてここで、ちょっと考えてみる。$n$ は自然数でないとダメなのか?実際のところ、部分積分において使われる $(x^n)^\prime = n x^{n-1}$ は、$n$ が実数であっても成立する。したがって、$p$ が実数であるとしても、漸化式 $J(p) = (p/a) \cdot J(p-1)$ は成立する。ただ、一般項を求める部分ややこしくなる。

おおらかに考えると、まず、$n$ 自然数のときには $1/a$ を $n$ 回掛ければよかったのだが、実数 $p$ の場合にはどうする? すなおに考えれば、$p > 0$ であるならば、 \begin{align*} J(p) = \frac{p}{a} \cdot J(p-1) = p \cdot (p-1) \frac{1}{a^2} \cdot J(p-2) = \cdots \end{align*} となって、$1/a$ を掛ける回数は自然数を使ってなんとか表現できそうである(たとえば $p$ を超えない自然数 $k$ 回、のように)。ただそれでも、$J(0)$ で打ち止めといかなくなる。というか、そもそも $J(0)$ というものがあらわれてくるのか? $p$ が自然数でないと、$J(0)$ は出てきはしまい。つまり、このやり方で $n$ を実数に拡張するのは無理があるのだ。ということで、実数の階乗については、$\Gamma$ 関数が登場してくるのである。

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